5Gは過去からのテクノロジーを積み上げた規格
メタバースの世界観に必要なテクノロジーの1つに掲げた5G(ファイブジー)について調べてみると、単に「大容量・低遅延・多接続」となった革新的なテクノロジーというわけではなく、これまでの移動通信の世代変遷の中で構築された規格であることがわかりました。数十年前には想像もできなかった、重要な社会インフラであるモバイル通信のため、急に回線が良くなるのではなく、少しずつ改良されてきているのですね。
メタバースに5G?
5Gはこれまでの4Gに比べ、理論値で10倍〜20倍の伝送速度となっています。その他にもこれまでの4Gに比べて遥かにモバイル接続環境が向上(詳細は後述)しています。もちろんメタバースのための5Gではありませんが、メタバースの世界観において、様々な場所から仮想世界へのアクセスであったり、今後開発されていくであろう、現在では夢のようなVRやARデバイスなどを考えると、重要なテクノロジーであると位置付けることができます。
5G(第5世代移動通信システム)と5GHz(Wi-Fi)は違います
ちょっとお恥ずかしいお話ですが、そもそも私が勘違いしていたので、ここで記載しておきます。5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、モバイル通信ネットワークの5世代目という意味になります。自宅にあるWi-Fiが5GHzと記載されていたので、同じ事を指しているのかと思っていましたが、、残念ながら全く異なりますのでご注意を。。
5G(第5世代移動通信システム)までの歴史
冒頭にも記載しましたが、5Gを調べているとここ20年くらいの歴史を振り返ることとなり、携帯電話を初めて手にした、懐かしい学生時代を振り返りながらこの表を埋めてみました。
略称 | 年代 | 世代名称 | 伝送速度 (理論値) | 主な デバイス | 説明 |
---|---|---|---|---|---|
1G | 1980年代 | 第1世代移動通信システム | - | 自動車電話 アナログ携帯 | アナログによる接続方式。 自動車電話や初期の携帯電話サービスで音声通話のみ。 DOCOMOはこの頃からあるブランドだが、auはIDOであった時代。 |
2G | 1990年代 | 第2世代移動通信システム | 最大64Kbps | ガラケー PHS | 通信方式がデジタル化され電子メール等の利用が可能になった。 PHSが登場したのもこの時期。デジタルフォン(後のソフトバンク)、 ツーカーセルラー(KDDIグループへ)がデジタル回線としてサービス。 |
3G | 2000年代 | 第3世代移動通信システム | 64~384Kbps | ガラケー | 国際標準化により普段使っている携帯電話を海外でも使える様になった。 データ通信が実用的な速度になり、携帯電話によるWeb閲覧の利用が拡大。 また、初期のスマホが発売されたのもこの時期 |
LTE /3.9G | 2010年代 | Long Term Evolution / 第3.9世代移動通信システム | 37.5~150Mbps | スマホ | スマホの普及に合わせて、マーケティング観点も考慮され LTE(Long Term Evolution)という新名称にて展開。 3Gと4Gの間の過渡期の技術とされ、3.9Gとも呼ばれる。 |
4G | 2010年代中盤から | 第4世代移動通信システム | 110Mbps~1Gbps | スマホ | LTE(3.9G)の改善により、4Gとなった。 通信が高速かつ大容量化し、スマホが一気に拡大。 現在も4Gの通信サービスが主流であり、動画閲覧であれば十分な性能を持つ。 |
5G | 2020年代から | 第5世代移動通信システム | 10~20Gbps | スマホ IoTデバイス | 大容量・低遅延・多接続のキーワードにて大幅に通信環境が向上。 これまでのサービスの利便性向上はもちろんのこと、IoTなどの 様々なデバイスからの接続を見越したサービス。 |
6G | 2030年代頃から | 第6世代移動通信システム | 100Gbps以上? | スマホ? IoTデバイス? | 5Gのさらに進化した規格であるため、超高速かつ大容量の通信サービス。 加えて超高信頼通信、カバレッジ拡張など、 新たな観点でもサービス向上の見込み。 |
5Gは、すぐに、大量データを、多くのデバイスからアクセスできる!
5Gはこれまでの4Gに比べて、「大容量・低遅延・多接続」の規格であり、メタバースだけではなく、様々なサービスにおける顧客体験向上が期待されています。そこで、「大容量を実現するための伝送速度」、「低遅延を実現するための待ち時間」、「多接続を実現するための接続密度」の数値を見ていきます。
伝送速度
歴史の表に記載したように、5Gの規格は下りで20Gbps、上りで10Gbpsの伝送速度となります。1世代前の4Gに比べて10倍〜20倍の伝送速度となるため、短時間で大量のデータを転送することができます。例えば、接続端末の容量を増やすことなく、クラウド上のファイルをあたかも自分のデバイス上のファイルのように扱うことができます。また、メタバースにおいても新たな仮想世界のデータの転送速度が短時間で終了するなど、仮想現実における操作感覚の向上に期待できます。
待ち時間
待ち時間とは、通信開始までの待ち時間のことです。5Gは1msとなり、これは4G(50ms)に比べると50分の1と、大きく改良されており様々なシーンにおいて利便性が上がります。(ちなみに、3G(100ms)と比べると100分の1と全く違う世界になってきます。)この待ち時間は、例えば動画を見始めようとしたときに、ほとんど待たずに始まるか、ちょっと溜めて始まるか、の違いになります。動画閲覧であれば少々遅くても構いませんが、反応速度を早くしたい仮想世界におけるゲームなどでは、重要なポイントになります。少しメタバースから外れると、遠隔医療、遠隔操作による自動車など、現代では様々な利用用途を考えるとこの待ち時間の短さは重要なポイントになります。
接続密度
5Gでは1平方キロメートルあたり100万台が接続可能となり、4Gの10万台に比べると10倍になります。現在、様々な機器にIoT端末が搭載されていますが、自動車関連のナビや車載カメラなど移動通信システムを活用することで利便性が上がるシステムにおいては、重要なポイントになります。これまでのスマホだけではなく、様々な機器からの接続を許容できる様になることと、使える幅が広がっていきます。メタバースの世界観において、まだ夢物語かもしれませんが、VRやARの接続端末がメガネの様に軽い実用的なデバイスになったときに、今まで以上の端末数による接続がスムーズに行われることで、新たな世界が広がります。
まとめ
- 5Gはこれまでの積み重ねによる移動通信のテクノロジー規格
- 5Gは大容量・低遅延・多接続により、1世代前の4Gに比べ大きく改良されている
- 5Gに似たキーワードにご注意ください
今回は5Gについて調査してみました。移動通信システムの変遷を見てくることで、5Gの有用性が少しでも実感できると嬉しいです。